鉄道員 (Il ferroviere)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (74点)

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【あらすじ】 50歳のイタリアの鉄道機関士Andrea Marcocci(Pietro Germi)は、末っ子のSandro(Edoardo Nevola)から英雄のように慕われているが、長女Giulia(Sylva Koscina)と長男のMarcello(Renato Speziali)からは、その厳格さや律儀で一徹な態度から敬遠されていた。しかしそんな彼らもやさしく献身的なマンマSara(Luisa Della Noce)のおかげで、毎日平穏に暮らしていた。そんなある日、娘の流産や息子の不良化に気になっていたAndreaが列車を運転していた所、彼の前に一人の若者が身を投げた。急いでブレーキをかけたが、間に合わずにその青年を轢いてしまう。(作品の詳細はこちら


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Andreaは絵に描いたような、昭和の頑固オヤジだ。融通がきかなくて厳格な男だが、家族を養っていくため、仕事一筋で真面目に頑張っている。そんな親心も露知らず、長女や長男は勝手なことばかりやって、おまけに自分(父)を煙たがっている。父親を慕い誇りに思うのは、末っ子のSandroだけ。Andreaの孤独や心の痛みを癒してくれるのは、仕事が終わったあと、行きつけの居酒屋で仲間と飲む酒だ。一杯入ると、がぜん機嫌が良くなり、ギターを爪弾きながら、仲間たちと歌う。父親を演じたPietro Germiが、メッチャカッコイイです。

パパが大好きなSandro。学校の成績はパッとしないけれど、愛嬌があって憎めず、家族だけでなくパパの同僚からも可愛がられている。大人の事情を鋭い勘で察知してしまい、「ここだけの話だよ」と口止めされたのに、やっぱり黙っていられないのと、姉(ねえ)ちゃんや大好きなパパのことが心配で、喋ってしまう。家の中の空気が、何かおかしいのを感じ取り、子どもだけど彼なりに色々考えて悩んでいるのだ。


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Sandroのマンマは、頑固な夫を支え、家族の問題に一喜一憂しながら、家族の要(かなめ)となって、家の中のことをテキパキこなす。次から次へと家族が問題を起こしても、アタフタ慌てずどっしり構え、大らかな母性愛で包み込んでくれる。Sandro少年や健気なマンマやがいなかったら、この家族はどうなっていたんだろう。


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Andreaの同僚で親友のGigi(Saro Urzì)や他の同僚たち、それから行きつけの居酒屋の主人たちも、人懐こくて明るく、人情味のある人たちばかり。だからAndreaが窮地に陥っても、1人だけスト破りしたAndreaを一度は村八分にするものの、まるで何もなかったかのように振る舞い、また以前のように付き合ってくれる。この人間同士のゆるやかな繋がりが、本当に心の支えになります。仲間が企画したクリスマス・イヴの素朴なサプライズにも、胸が熱くなりました。様々な蟠(わだかま)りが解け、最高のイヴを過ごした夫婦。2人だけになった静かな家で、Andreaはギターを爪弾きながら逝ってしまい、別室のSaraはそれに気づかないまま、幸せに満ちた表情で夫に語りかけるシーンは、涙を誘う。


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# by amore_spacey | 2018-05-18 00:34 | - Italian film | Comments(0)

第71回カンヌ国際映画祭のレッドカーペット

2018年5月8日(火)より、第71回カンヌ国際映画祭が開幕し、オープニングのレッドカーペットの様子が公開されたので、気になった何人かをピックアップしてみました。

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審査員長のCate Blanchett。

 
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審査員の1人Kristen Stewart。


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Julianne Moore。


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Mick JaggerとJerry Hallの末娘
Georgia May Jagger。


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ロシアの実業家&司会者のElena Lenina。ゴールドの仏像。毎年紅白歌合戦で凝った衣装が話題になる小林幸子のカンヌ映画祭バージョン。


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Penelope Cruz。


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OMG!
Chiara Mastroianni。


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62歳のぶりっ子
Isabelle Adjani。


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# by amore_spacey | 2018-05-14 03:18 | My talk | Comments(2)

ジェーン・エア (Jane Eyre) BBCドラマ 全4話

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 悲惨な子ども時代を過ごした孤児のJane Eyre(Ruth Wilson)は、教師の資格を取り、Thornfield Hallの屋敷で住み込みの家庭教師の職を得る。晴れて新しい生活を手したJaneは、屋敷の主人Rochester(Toby Stephens)と恋に落ちていくが、Rochesterにはある秘密があった。Charlotte Brontëの同名小説をドラマ化。(作品の詳細はこちら


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しばらく前に『嵐が丘』を観て以来、英国ロマンス・フィクション熱に火がつき、このところBBCやITVのドラマを観ています。この作品も過去に何度も映画化・TVドラマ化されているので、どのヴァージョンを観ようか迷ったが、決め手になったのはキャストでした。それから英国のドラマには、豊かな自然が登場するので、毎回美しい風景を見るのも楽しみだった。


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Toby Stephensは嫌な奴や悪役を演じることが多いので、Rochester役はかなり意外だった。それだけにどう演じるのか、期待も高まる。で、これが申し分のないキャスティングでした。ちょっぴり荒々しいが自由奔放に生きる、しかもそこに貴族の気品を備えたRochesterに、驚くほどハマッていたのです。今回はTobyが情愛のあるイイ男に見えました。ええ、ラブ・ロマンスですから。遠くを見る時の視線や喋り方が、お母さんによく似ている。


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Janeを演じたRuth Wilsonは、全く知らない女優さんでした。口をきっと結んだ表情が、彼女の内面を映し出して印象的。どちらかといえば地味な顔立ちだが、秘めた強靭な意志や溢れる知性、そして奥ゆかしく落ち着きのある雰囲気は、私が描いていたJaneそのものだ。Rochesterと言葉を交わすときの、恥らいつつもひたむきな表情や、彼を思う気持ちを隠し切れず、頬を紅潮させる純朴さが魅力的で、私もドキドキしました。さらにあの時代には珍しく自立した女性で、いざとなれば一人で生きていく事だってできる。Ruth Wilson扮するJaneの、静かな存在感に圧倒された。

RochesterとJaneの2人が出会い、なんとなく気が合う。互いの言葉が面白く、会話が楽しくて仕方がない。言葉を通して互いに惹かれていき、気がついたら恋に落ちていた。2人の間にあった空気が次第に熱を帯びて、徐々に変化していく様(さま)を、主役の2人は細やかな仕草や表情で演じ、久しぶりに私も胸がときめいて、幸せな気持ちになりました。


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ところが、事はそう簡単には運びません。ああ、この展開は、まさしく少女漫画そのもの。邪魔が入るんです。なんと、Rochesterには妻がいた。しかも彼女は遺伝性の精神病を患っており、屋敷の一室に閉じ込められている。挙式真っ只中で明らかになるなんて、あまりにも残酷だ。けれどこの試練がかえって、2人の絆をより深めたと言いましょうか。いえいえ、Janeの気持ちは最初から決まっておりました。2人を阻むものは、もう何もない。どうか末永くお幸せに。


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# by amore_spacey | 2018-05-10 01:13 | - TV series | Comments(2)

日の名残り (The Remains of the Day)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (82点)

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【あらすじ】 1950年代のイギリス、Oxfordshire。アメリカ人の富豪Jack Lewis(Christopher Reeve)に仕える老執事James Stevens(Anthony Hopkins)は、人手不足に悩んでいた。そこでかつてこの屋敷の主(あるじ)だったDarlington卿(James Fox)の下で、共に働いた有能な女中頭Kenton(Emma Thompson)から手紙を受け取った彼は、彼女に職場復帰を促すため休暇を得て旅に出る。第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間で、淡い恋に揺れ動く執事の哀切を描く。カズオ・イシグロの同名小説を映画化。(作品の詳細はこちら


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人生の黄昏時に差し掛かったStevensが回想するのは、Darlington卿に仕えた日々や老いた父親の面影、去り行く時代への懐旧の情や戦争による価値観の転換、そしてKentonとの淡い心の交流。「自分が人生を賭けて大事にしてきたものは、本当に意味があったのだろうか?」と、彼は自問する。執事という仕事に誇りを持ち、天職と信じて疑わなかったStevensの仕事ぶりには、清々しさや神々しいまでの崇高さが漂う。これぞ英国の伝統と思わせる、毅然たる態度や気品ある佇まいに、男の色気やダンディズムを感じました。しかし彼には悔やみ切れない思いが、いつまでも心にわだかまっている。


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屋敷の雑事を取り仕切る上で、執事と女中頭は互いに信頼と緊張を併せ持ちながらも、日々の暮らしの中で好意以上のものが生まれるのは、ごく自然の成り行きでありましょう。しかしStevensは恋愛に関してはひどく奥手で、Kentonを口説くどころか、好意を示す術(すべ)すら知らず、最初の1歩が踏み出せない。とても切なく胸が苦しくなります。安っぽい恋愛小説に、ささやかな心の慰めを得ていたStevens。それをKentonに見つかった時の狼狽ぶりと言ったら、ポルノ雑誌を隠れて見ていた男の子が、母親に見つかったような慌てぶり。仕事中のStevensとは全く別人の、人間味溢れるリアクションに、思わず頬が緩んでしまう。あのシーンのAnthony Hopkinsに、胸きゅんきゅん!萌えました。まさかLecter博士が、いじられキャラになるなんて…。わたし、Anthonyに惚れちまったかも。


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自問自答しながら、Stevensは自分が歩んできた道を真摯に受け止め、過去から身をそっと振りほどき、1人の執事として生きていくことを選ぶ。この潔さに、心が震えました。伝えられなかったKentonへの愛情は色褪せることなく、彼の胸の中で生き続ける。Dartington Hallが最も輝いていた時代に、人生のある部分をKentonと共有できた。それで十分ではないか。

ただ、別れのラストシーンが、あまりにも残念すぎました。土砂降りの雨の中って、あれはないわぁ。手抜きのやっつけ仕事にもほどがある。それまで作品を包んでいた良い雰囲気が、台無し。

 
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# by amore_spacey | 2018-05-06 01:27 | - Other film | Comments(0)

環状線の猫のように (Come un gatto in tangenziale)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

ちょっとだけネタバレ!

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【あらすじ】 ローマ旧市街に瀟洒な住まいを構え、シンクタンクで働くインテリのGiovanni(Antonio Albanese)と、多様な人種が混在する郊外で調理スタッフとして働き、日々の生活に追われるMonica(Paola Cortellesi)。生活環境が全く異なり、知り合うことはなかったはずの2人だが、彼らの子どもたちが好意を寄せ合い、付き合い始めたことから、やむを得ず交流することになる。(作品の詳細はこちら


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富裕層のエリートと言ったら、Pierfrancesco FavinoやFabrizio Gifuniをキャスティングしたいが、パッと見は冴えないAntonio Albanese、でも彼が動き出すや否や、その演技力にぐいぐい引き込まれ、最初の違和感を簡単に吹っ飛ばしてくれる。今回彼と共演するのは、Monicaに扮するサバサバ系女優Paola Cortellesi。身体中タトゥーだらけで、野球のバットをぶん回して、Giovanniの高級車のフロントガラスを叩き割る、という衝撃的な登場に、Giovanniでなくとも恐怖とショックのあまり言葉が出てこない。階級の違いによる「お育ち」の違いは、疑う余地なし!なのであります。


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格差のある家族ならではのお決まりのエピソードが、あとからあとから出てくる。が、退屈しない。これがもしRomeoとJulietの時代だったら、大切な娘に変な虫がつかないよう、娘を高い塔に幽閉したり、修道院に送り込んだり、はたまた下賎な男の子一家に濡れ衣を着せて、彼を島流しにするかもしれない。21世紀のローマではさすがにそんなことはないけれど、「あそこの家とは格が違うから…」という理由で、徐々に疎遠にされたり、破談になったりすることはまぁあります。

が、この作品の良いところは、格差社会を前向きにとらえていること。高所得者層代表のGiovanniは、統計上の数値だけでは見えてこない低所得層の暮らしぶりを、身を持って実感し、また階層で人を判断していた自分の尊大さに気が付く。一方低所得者層代表のMonicaも、ただぼやいているだけでなく、現状改善に乗り出し、郊外にピッツェリアを開く。


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格差社会が生み出す摩擦や軋轢など、深刻に捉えると重苦しくなるが、この作品は全てをひっくるめて、笑い飛ばして楽しもうというスタンスで描かれている。なので主役の2人もそれに応えて、軽くなりすぎないよう絶妙の匙加減をしながら、からりとした笑いに変えて素敵なコメディに仕上がっている。ところでMonicaの異母姉妹(双子?)として登場する、2人のポーランド人女性が、最強無敵です。脇役なのに、存在感ありすぎ(爆) 因みにタイトルの「環状線の猫のように」は、交通量の多い環状線で猫は生きられない(短命)ことから、あまり長続きしないことを意味する。インテリのGiovanniとタトゥー女Monicaの関係は、細く長く続くのか?環状線の猫のようにすぐ終わってしまうのかしら?


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# by amore_spacey | 2018-05-03 01:12 | - Italian film | Comments(0)