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燃えつきた納屋 (Les granges brûlées)

ネタバレあり!!!
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【あらすじ】 豪雪に閉じ込められたフランスの閉鎖的な片田舎で、ある日医師の妻が殺害され、大金が強奪された。この事件を担当することになった気鋭の地方判事Pierre Larcher(Alain Delon)は、「燃えつきた納屋」と呼ばれる大農家を切り盛りする女主人Rose(Simone Signoret)とその夫Pierre(Paul Crauchet)の次男Paul(Bernard Le Coq)を容疑者としてマークし、この一家の捜査を始める。(作品の詳細はこちら


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フランスの田舎で起きた殺人事件の捜査が作品の軸になっているが、捜査が進むにつれ「燃えつきた納屋」一家の実態があぶり出され、この家族は崩壊に向かっていく。事件を担当する判事Alain Delonが、犯人は絶対に次男坊だと確信し、息巻いて揺さぶりをかければ、無能で愚かなダメ息子だけど、それでもわが息子だから、一家の名誉のためにも何としても息子を守ろうと、女主人Simone Signoretが孤軍奮闘する。二人の心理的な駆け引きや攻防戦が、ずっしりと見応えのある作品でした。Alainが年上のベテラン女優Simoneに畏敬の念を抱いている様子が伺われ、同じ画面に二人が登場すると、何とも言えない良い雰囲気が醸し出される。若い頃この映画を観た時には、犯人捜しにばかり気をとられて、本当の面白さを見逃していました。

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いや、もうね、この作品の登場人物全員が束になってかかっていっても、Simoneの存在感や底力には敵いませんよ。と言いますか、「燃えつきた納屋」一家の男たち、特に二人の息子たちが愚鈍で全く使えないロクデナシだから、しっかり者の母ちゃんが頑張るしかなかった。ひょっとしたら母親が余りにも厳しく強すぎて、息子たちが出来損なってしまったのかもしれませんが、いずれにしてもこの家族がずっと前から抱えていた問題、見て見ぬ振りをして先送りしてきた諸々の隠し事が、事件をきっかけにすべて露呈し、一気に崩壊に向かって転げ落ちていくのです。これに輪をかけたのが、家や土地を守ろうとする親世代と、土地は売って金にする息子世代の価値観の違いや、田舎から都会へ出ようとする時代の流れだったかもしれません。

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ニートの次男坊だけど、無実だと信じてやりたい。愚かな大バカ息子ってのは百も承知、それでも自分の子どもだから仕方がない。という母親の絶望的な辛さや諦めが痛々しく、一人で背負っていくにはあまりにも重い十字架です。辣腕判事のPierreですら気後れするようなRose、そんな彼女が半生をかけてやってきたこと・守ってきたものって、一体何だったんでしょう。


by amore_spacey | 2020-01-06 01:59 | Alain Delon | Comments(2)

帰らざる夜明け (La veuve Couderc)

ネタばれあり!!
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【あらすじ】 1934年、フランスの農村地帯で、夫に先立たれて舅のHenri(Jean Tissier)と農作業をしながら暮らす中年女Couderc(Simone Signoret)の前に、若い男Jean Lavigne(Alain Delon)がふらりと現れた。彼女の農作業を手伝いながら一緒に暮らし始めた二人は、やがて懇ろになる。
  男は昔殺人を犯し、服役中に脱獄して逃亡中の身の上だった。間もなく近所に住む身内の通報により警察が動き始め、二人の束の間の平和な暮らしは、終焉を告げようとしていた。Georges Simenonの小説を映画化。(作品の詳細はこちら


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オープニングで流れるPhilippe Sardeの、哀愁に満ちたテーマ音楽(←音が出ます&映像にネタばれあり)を聴いて、すでに鼻の奥がツーン。「この作品がハッピーエンドではないのは明らかなんだけど、まだ作品が始まってもいないのに、これって反則すぎる」ってくらい、心を揺さぶるメロディーなのです。フランスの片田舎の田園風景や運河に架かる跳ね橋など、作品となった舞台も申し分ありません。謎めいた雰囲気の流れ者(Alain当時36歳)と偏屈そうな未亡人(Simone 50歳)と軽い知的障害のあるシングルマザーFélicie(Ottavia Piccolo 22歳)の刹那的な三角関係、やるせない愛や孤独感や農村の濃密で息苦しい人間関係が、どこまでも広がる美しい田園風景の中で、くっきりと浮かび上がり、私たちの心を容赦なく掻き乱すのです。

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アドゥアと仲間たち』で、当時39歳のSimoneがすでに人生の酸いも甘いも味わいつくしたような女を演じていたが、本作品では50歳になった彼女が、孤独や寂しい感情に蓋をして強く生きる女を好演しています。年齢が離れ悪い条件しか揃っていない二人が、将来の夢や希望を持っても叶う訳はなく、視聴者も悶々とする。

強面のSimoneが隣家の若い娘に嫉妬したり、新しいネグリジェを買って、彼の帰りを待ったりする姿には、女の恥じらいがありとてもいじらしかった。一歩間違ったら、女の生々しさが痛々しいだけなのですが、さすがSimone女史!絶妙の匙加減です。

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「どうしてあんな女(=Félicie)と付き合うの?」という彼女に、「若いから」と平然と答えるAlain。あちゃー、身も蓋もないヤツだな。彼女だってそんな答えが返ってくることぐらい、分かっていたはずなのに、自虐的なんだから。残酷なシーンだ。かと思えば、部品交換で孵卵機が作動するようになり、将来の夢を膨らませて、子どものように無邪気にはしゃぐ二人。あのシーンも印象的でした。

Coudercは淡い恋愛感情をJeanに抱いていたが、彼にピストルを突きつけられたことで、心が決まる。何があっても彼を守ろう、と。普通なら速攻で警察に通報するものですが、彼女は違った。幸せになれる可能性なんてゼロだけど、命を懸けて一人の男を守る人生があってもいいではないか。そんな彼女の気持ちに気づいてか、Jeanも暴挙には出なくなり、彼女のためにせっせと働く。SimoneとAlainの共演による、男女の心の機微の細かな描写は、誠に見応がありました。 


by amore_spacey | 2019-12-16 01:20 | Alain Delon | Comments(0)

アラン・ドロン、名誉パルムドールを受賞 (Palme d'or d'honneur)

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第72回カンヌ国際映画祭で、映画史への功績を称える名誉パルムドールがAlain Delonに贈られた。授賞式では娘・女優のAnouchkaからトロフィーを受け取り、満場の拍手に感極まって涙を流す場面もあった。


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受賞のあと彼は、「このパルムドールは、私を育ててくれた監督たちに贈られたもの。そんな名誉あるものを受賞して、私は今とても幸せだ。けれど共演者たちの多くが既に故人となり、それが寂しくてならない」と語っている。また1957年に開催されたカンヌ映画祭で、ハリウッドのエージェントにスカウトされたエピソードに触れ、「もしあの時カンヌに行かなかったら、もしあの時エージェントにスカウトされていなかったら、私は今頃ろくでなしになっていたかもしれない」と自嘲気味に話し、会場をほのぼのとさせた。


by amore_spacey | 2019-05-26 00:18 | Alain Delon | Comments(4)

おめでとう!アラン・ドロン (Palma d'oro alla carriera per Alain Delon)

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第72回カンヌ国際映画祭(2019年5月14日~25日)の名誉パルム・ドール受賞者に、Alain Delonが選ばれました。「映画祭は一緒に仕事をした監督を祝うためにあるもの」と、彼は同賞をずっと固辞してきましたが、ついに受賞することにしたようです。(詳細はこちら

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舞台でもよく共演する、娘のAnouchkaと。

2017年5月には、今後出演する1本ずつの映画と舞台を最後に、引退するとの意向を表明しました。映画については今後の出演はないが、演劇の舞台には立つつもりだと。またあるインタビューでは、「この世界で仕事をして来たことに悔いはないが、強いて言えば女性監督と仕事の縁がなかったことだ」と答えています。


by amore_spacey | 2019-04-20 00:58 | Alain Delon | Comments(0)

暗殺者のメロディ (The Assassination of Trotsky) 

ネタばれあり!

お気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 1940年。ロシア10月革命の指導者であり、Leninにつぐ中央委員会の一人だったLeon Trotsky(Richard Burton)は、政策の権力抗争に敗れソ連共産党から除名、メキシコに亡命した。しかしそこでも官僚制を批判しつづける彼に、Leninの後任と目されるStalinは、刺客Frank Jackson(Alain Delon)を送る。FrankはTrotskyの秘書Gita(Romy Schneider)に自分を夫と偽らせ、論文をみてほしいという名目で、厳重な警戒をすり抜けてTrotskyに近づく。(作品の詳細はこちら


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歴史的な背景を知らないことが最大の原因だけど、Trotskyが暗殺されるまでの何日かを、史実に基づいて再現すると、こうなってしまうのか?というくらい、間延びして退屈だった。それだけにラスト10分の急展開で、シャキーーンと目が覚めました。『サムライ』『スコルピオ』など、非情でクールな殺し屋を何度も演じているAlainが、この作品では珍しくオドオドして余裕がない。冒頭で登場した時にはいつもの彼に見えたが、不安で神経質で落ち着かない様子が頻繁に出てくる。丸メガネやサングラスも、暗殺者らしからぬ滑稽な雰囲気だし、話す声にもヘタレ感が滲み出ている。こんな男にTrotskyが殺せるのか?と、観ている私まで不安になってきた。

Trotskyの日常生活を描くことに時間が割かれたため、Frankの生い立ちや人間像が今一つ分かり難いが、Trotskyに扮したRichard Burtonの存在感は、他を圧倒していました。脳天から滝のように血を流しながら、Frankに向かっていく時の鬼気迫る顔や、暴れるFrankの腕に掴みかかろうとする生命力は、その場に居合わせたような臨場感に満ちて、迫力満載。これに続くAlainの怪演にも、驚きのあまり目が点になってしまいました。こんなAlainを観たことがない。Trotskyにピッケルを振り下ろした瞬間、Frankの中で何かがプッツリ切れた。今まで辛うじてバランスを保っていたものが、この瞬間、一気に崩壊してしまった。狂気に満ちた慟哭、狂った猛獣のように奇声を発し続けるFrank。可哀相な男だ。面会に来たGitaの、「あの男(=Frank)を殺して!」と繰り返し叫ぶ声が、Frankの奇声と被って耳から離れない。

うーん、突っ込み所も色々あります。英語を話すAlainやRomy Schneiderが、母国語ではないからか?どこか不自然で無理をしている感じがする。暗殺道具にピッケルを選んだ理由も、よく分からない。コートの下に隠しても、挙動不審ですぐにバレそう。Trotskyの屋敷の警護も、隙だらけで甘い。一番の謎はどうしてStalinってば、こんな男を刺客に選んだのか?他に人材はいくらでも居ただろうに。


by amore_spacey | 2019-04-07 00:59 | Alain Delon | Comments(0)

カサノヴァ最後の恋 (Le retour de Casanova)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (72点)

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【あらすじ】 色事師Giacomo Casanova(Alain Delon)も、すでに53歳。寄る年波からか望郷の念が強く、追放されたヴェネチアに帰りたがっていた。若い侍従Camille(Fabrice Luchini)と共に、Olivo(Gilles Arbona)の屋敷に行ったCasanovaは、領内に住むOlivoの姪Marcolina(Elsa Lunghini)の美しさの膚となる。彼は自慢の口説き文句を並べて迫るが、彼女の反応は冷たく、おまけに下級貴族の将校Lorenzi(Wadeck Stanczak)という恋人の存在も判明した。(作品の詳細はこちら


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Casanovaと言ったら色事師で、ヴェネチアのドゥカーレ宮殿地下にある「鉛の牢獄」から、脱獄に成功した唯一の男ということしか知らなかったが、調べてみると、冒険家・作家・詩人・錬金術師・外交官・哲学者と実に多彩な顔を持ち、そしてスパイでもあったらしい。こんなイケメンでデキる男を、女性が放っておく訳がなく、どこに行ってもモテまくり。しかし人間は皆、年をとる。Casanovaも老いる。この作品では若い娘に見向きもされない晩年のCasanovaを、当時57歳のAlainがどう演ずるのか楽しみだった。

最盛期の美貌こそ失われたものの、初老の哀愁を漂わせたAlainには、まだまだ男の色気があり、歳相応の余裕さえ感じさせた。若い娘Marcolinaにすっかり心を奪われてしまったCasanovaは、明けても暮れても彼女のことばかり考えて、まるで思春期の少年のよう。彼女を口説き落とそうとするが、相手は全く興味を示さない。下僕Camille(Fabrice Luchini)の助言に従ってもうまくいかず、拒絶され続けるが、そんなことで引き下がるCasanovaではない。飼い主からどんなに邪険に扱われても、相手になって欲しくて足元にまとわりつく子犬のように、なりふりかまわずアタックし続けるうちに、どんどんイタいおじさまになっていきます。

案の定、この天下のイケメンはMarcolinaから、「あなたは年寄りだし、肉体的に嫌悪を感じるし、その化粧ときたら時代遅れも甚だしいわっ」と、屈辱的な仕打ちを受ける。いやいや、面と向かって、そこまで言いますか?若いって罪、コワいモノなし。世界中の女たちを泣かせた恋の仕事人が、こんな小娘に舐められるとは!ズタズタに打ちのめされたはずなのに、まだ諦めきれないなんて、Casanovaも懲りない人です。どうしてもMarcolinaと一夜をともにしたくて、カードの借金の肩代わりを交換条件にして、Lorenziに頼み込んだ。こうなったら破れかぶれよ、プライドも世間体も全部捨てる。こうして思いは叶ったものの、何となく後味が悪く、おまけに決闘を申し込んできたLorenziを倒してしまい、ここにきてようやくCasanovaは悟ったはずだ。人生の転機が来ていると。かつての自分はもう居ないと。イタいおじさまになって、初めて目が覚めたのでしょう。

ロンゲのAlainを見るのは、たぶんこれが初めて。うーん、微妙。でも色々な仕草が、いちいち可愛い。振られてガックリ肩を落としたり、とぼとぼと小路を歩く姿をみたら、下僕のCamilleと一緒に励ましてあげたくなります。お茶目で機転のきく下僕に、Casanovaは随分助けられてきた。主従関係なのに、漫才芸人のような2人で面白い。Alain当人に関しては、自分の美貌にしがみついているようには思えない。人生の翳りを感じさせつつ、彼は幾つになってもAlainでございます。


by amore_spacey | 2019-04-03 23:14 | Alain Delon | Comments(0)

チェイサー (Mort d'un pourri) 

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

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【あらすじ】 パリ。早朝5時、実業家Xavier Maréchal(Alain Delon)が部屋で恋人のFrançoise(Mireille Darc)といるところに、親友の代議士Philippe Dubaye(Maurice Ronet)が訪れた。彼は同僚のSerrano議員(Charles Moulin)を殺害したと言い、Xavierにアリバイ作りを依頼する。親友のためにXavierはアリバイを承諾。翌日向かった犯行現場では、Moreau警部(Michel Aumont)とPernais警部(Jean Bouise)が、Serrano文書という重要書類が消えていると言う。Serrano文書とは、政財界をゆるがすような、政治家たちの汚れた行状が記されているものだった。(作品の詳細はこちら


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Alain DelonとMaurice Ronetは3回共演しているはずですが、いずれもMauriceが死んでしまいます。「やれやれ、お前(=Alain)と組むと、俺、いつも消されるんだよなあ」なんて、Mauriceはロケ現場で苦笑していたかもしれません。それはさておき、正義に満ちたAlainって、やっぱりカッコいい。クールで隙がなくて、時には冷酷さを感じさせ、ゾクゾクします。そんな一匹オオカミ的な彼が、今回はなんと親友のために一肌脱ぐというではありませんか。わざわざ自分から面倒な事件に巻き込まれに行くなんて、バカなヤツだと思うのですが、信じた親友を裏切ることが出来ないさそり座の性質(さが)が、そうさせてしまうのかも。Alainも私もさそり座。

ただ、、、政界を揺るがすほどのSerrano文書が争点になっているのに、これを巡る争奪戦がバッサリ省略されているので、全体に期待したほどの盛り上がりや緊迫感がない。Philippe殺しの真犯人も意外ではあったものの、今一つ説得性に欠けていました。

さて中盤から登場するKlaus Kinskiという役者は、存在自体が暗黒で強烈です。画面に出てきただけで、「こいつ、絶対に凶悪だ。」と思わせ、嫌ァな感じに心がざわざわする。銃弾ぶち込んでも決してくたばらない、悪の化身のような風貌の持ち主で、後半はKlausとAlainが正面から激突する展開かと思いきや、こちらも肩透かしを食らってしまった。なので残された楽しみといったら、ハードボイルドでストイックなAlainを目で追うことだけでした。Pernais警部が渋くていいですね。登場回数が少ないのに、心に残るキャラクターです。


by amore_spacey | 2019-03-23 17:01 | Alain Delon | Comments(0)

暗黒街のふたり (Deux hommes dans la ville)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 銀行強盗の主犯として12年の刑で服役し、懲役を終え出所したGino(Alain Delon)と彼の社会復帰を見守る初老の保護監察司(Jean Gabin)。Ginoは真面目に第二の人生を歩み始めるが、彼の更生を疑うGoitreau刑事(Michel Bouquet)の魔の手が、彼だけでなく彼の妻Lucie(Mimsy Farmer)にも伸びてくるのだった。(作品の詳細はこちら


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『暗黒街のふたり』という日本語タイトル、そして主役の2人がAlain DelonとJean Gabinとくれば、暗黒街に生きるギャングの話に決まっているでしょう。ところが今回この2人は、前科者と保護監察司という、全く別の世界に生きている人間で、Jeanが刑務所の塀に沿って歩いている冒頭のシーンに、「フランスの刑務所ではまだ、死刑の執行にギロチンが使われる。」というナレーションが入る。「ええーっ?これって、どんな話なの?」

そしてラストシーンは、Alain演ずる殺人犯がギロチンで処刑される場面で終わる。この映画が公開された当時、フランスではギロチンによる死刑執行がまだ行われていたこともあり、ギロチンという旧態然としたフランスの死刑、そして死刑制度に物申す意図があったように思います。

さて、出所後は市民社会で真っ当に働き、妻との堅気の生活に、ささやかな幸福をかみしめる前科のある男と、犯罪者の社会復帰を見守る一人の初老の保護司、それから「犯罪に手を染めた人間は必ず犯罪を犯す」という根拠のない確信から、鬼のようにしつこく前科者をつけまわす刑事。こうした数々の偏見や歪んだ見方が、社会復帰を試みる犯罪者を追い詰め、更生の芽を摘み取ってしまう。

あれだけ執拗に付きまとわれれば、誰だって心の中で何かがプッツリ切れますよ。「いやいや、その一線を越えちゃ、ダメでしょう」は、正論なんです。あの手この手で煽動するGoitreau刑事に、Ginoは決して応戦してはいけなかった、これも真っ当な意見。でも前科者という十字架を背負ったGinoは、踏みとどまることができなかった。刑事の手口にまんまとハマって殺人罪で逮捕され、裁判の結果は死刑で、ギロチンにかけられるなんて、あんまりじゃないですか。

ギロチンの刃を前に振り返るAlain、そしてそんな彼を見つめるJean。無言のやりとりの中に無念の思いが込められ、何ともやるせない気持ちに包まれる。こんな悲しい作品にもかかわらず、AlainとJeanが共演していることで、不思議な安心感がありました。


by amore_spacey | 2019-02-19 02:15 | Alain Delon | Comments(2)

フリック・ストーリー (Flic Story)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 凶悪犯Emile Buisson(Jean-Louis Trintignant)が脱獄した。フランス国家警察局のRoger Borniche(Alain Delon)刑事は、Emileの逮捕に乗り出し、密告からつかんだ彼のアジトを襲撃する。しかしEmileは彼をあしらうように逃亡し、刑事の協力者を次々と殺害していく。Roger Bornicheが残したフランス史上最凶の殺人犯Emile Buissonの捜査手記をもとに映画化。(作品の詳細はこちら


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フリックとは、フランス語で「警官」「刑事」の俗語で、「ポリ公」「デカ」にあたるらしい。 『リスボン特急』の時と同じように、今回も刑事役にAlain Delon。いやいや、こんなにハンサムで何をやっても様になる中年刑事って、実際にはいませんよ。タバコを吸う仕草なんぞは、一連の流れるような所作に見入ってしまった。

恋人Catherine(Claudine Auger)への愛情表現もこなれたもので、手の甲から指先でやさしく髪を撫でる仕草は、見ているだけでとろけそうです。上司の悪態をつく時の口調など、普段もこんなだろうなと思わせる。仕立てのよいスーツにオリーブグリーンのトレンチ・コートを羽織った姿は言うまでもなく、グレーのタートルネックにツイードのジャケット+ハンチング帽子といったラフな格好もサマになり、ストーリーそっちのけで、彼ばかり追っていた。


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一方Trintignantが演じる凶悪犯には、得体の知れない不気味な暗さがあり、血も涙もない冷酷非情な存在だ。彼は強盗殺人を繰り返すだけでなく、裏切ったと思った仲間も容赦なく射殺する。人間として肝心なものが欠落しているのか、その極悪非道っぷりには恐れ入る。彼の死んだような目と合ったが最後、誰もが凍りついてしまうんですよ。コヤツは逃げ足も速いから、なかなか捕まえることができず、Alain扮する刑事がイライラする訳だ。2人の立場は正反対だが、感情に飲まれず、冷静な判断を下して突き進んでいくところは、よく似ている。


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本作品は犯人側と刑事側の状況が交互に描かれるので、私たちは事件の経過を両方から追うことが出来る。で、両者は田舎のレストランで対決するのだが、逮捕直前のあの緊迫感といったらない。食事を待つ間、CatherineがレストランのピアノでLa Vie en roseを爪弾く、その音色に誘われるようにして、レストランに現れたTrintignantは、ピアノの傍らで聞き入る。そして「Piafを…」と彼女にリクエスト。ほんの束の間の安らぎ。固唾を呑んで見守る私たち。この和やかな雰囲気がいつ破られるのか、ドキドキハラハラで、息詰まるような緊張が走る。

前のめりに歩く足下がクローズアップされる、オープニングもなかなかいい。歩き方から、Alainであることがすぐに分かる。終戦後の日常のパリの風景も、肌理(きめ)細かく演出され、目を楽しませてくれる。そして注目すべきは、AlainとJean-Louis Trintignantの初共演だ。全くタイプの違う2人の役者が、それぞれのキャラクターを生かし、刑事と凶悪犯という役柄で、素晴らしい競演を見せてくれた。役者としてTrintignantを敬愛するAlainの心情が、逮捕後の2人のやりとりからも伺える。車の後部座席に並んで座った2人から放たれたオーラに、圧倒されました。



第三回プラチナブロガーコンテストを開催!


by amore_spacey | 2018-11-07 01:24 | Alain Delon | Comments(2)

地下室のメロディー (Mélodie en sous-sol)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (78点)

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【あらすじ】 5年の刑期を終え出所した老ギャングのCharles(Jean Gabin)。彼はまだ親のスネをかじっているムショ仲間の青年Francis(Alain Delon)とFrancisの義兄で自動車修理工のLouis(Maurice Biraud)と組んで、再びカジノの現金を強奪する計画を立てる。標的は南仏カンヌのリゾート・ホテルのカジノにある10億フラン。周到に立てた計画通り事は運び、大金強奪は成功したかに見えたが…。(作品の詳細はこちら


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ノワールの大御所Jean Gabin(コアラに似てる)と美貌に恵まれた若いAlain Delonの共演。本当の父親と息子のような愛情と尊敬に満ちた2人の間には、女の入る余地など全くない男同士の連帯感に満ち溢れて、もうね、羨ましいのなんのって。Alainの右肩の隅っこでいいから乗せてもらいたい。いえいえ、邪魔にならないように耳の中で体育座りさせて頂くだけで本望です。この作品がこんなブラック・コメディだったなんて、全く記憶になかったから、初めて観るような新鮮な感覚でした。ただBGMが大袈裟で煩すぎた。


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真面目なサラリーマンをやらせればピカイチの中井貴一、定職に就かずブラブラしている困った30過ぎをやらせると下卑た魅力が光るAlain(この2人が共演したら面白いかも)。中井貴一のように地道に真面目に働けば、そこそこの暮らしができるのに、凝りもせずコアラおじさんとイケメン青年の2人は、また一発当ててやろうと良からぬ事を企む。頭がお花畑の大バカ野郎たちなのか、現実味のない夢見るお坊ちゃまたちなのか。とにかくコツコツとか地道にとかいう言葉とは縁遠い、親子ほども歳の違う2人がタッグを組んで、とんでもないことをやってくれます。


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後半に入ると、「この計画、ホントに大丈夫なのか?」と何度も不安になったり、緊迫感に満ちた場面が出てくる。でもコアラおじさんが何とかしてくれる、彼がいるから大丈夫という、根拠のない確信があったので、あのラストシーンには、心からぶったまげました。苦肉の策でプールに沈めた鞄の蓋が水圧で開いてしまい、10億フラン分のお札が1枚また1枚と浮かび上がって、広いプールの表面に拡がっていく。あちゃーっ!華麗に散ってゆく10億フラン。ヴィジュアル的にとても美しく、印象的なシーンだ。ここまで派手にやってくれると、大失策にもかかわらず、天晴(あっぱ)れ!と拍手したくなる。

プールサイドで一部始終を見ていたコアラおじさんは、憮然として臍(ほぞ)を噛むばかり。ああぁ、ったくFrancisは、何やってんだ。これがビートたけしの任侠映画だったら、その場でAlainの頭をぶち抜いただろう。コアラおじさんだって、はらわた煮えくり返っているんだけど、ほとぼりが冷めたらまた2人つるんで何かやらかすに違いない。Jean Gabinの老練の演技と存在感と、非のうちどころのない美貌に恵まれたAlain DelonのJeanへの敬意の念。親の愛に飢えていたAlainにとって、Jeanは育ての父親のような存在だったのではないかしら。


by amore_spacey | 2018-10-26 00:28 | Alain Delon | Comments(4)