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憶えてる? (Ricordi?)

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【あらすじ】 彼(Luca Marinelli)と彼女(Linda Caridi)の長年にわたる恋愛の軌跡を描く。二人は幼年時代のエピソードを語ることで、まずお互いを知ろうとする。そして彼らが恋におちたとき、またそれぞれ別の人に恋をしたとき、幸せだった日々、気持が満たされなかった日々、その時の瞬間の感情を色に託して映し出していく。
  暗い思い出の多い物憂げな彼と、ポジティブで天真爛漫な彼女。年月とともに彼は少しポジティブになり、反対に彼女は考え深くなる。彼は永遠の愛を信じるが、彼女は終わってしまった愛にノスタルジーを感じる。時の移ろいや互いの心の距離によって、思い出や記憶は姿形を変えていくものだ。(作品の詳細はこちら


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彼と彼女が過ごした歳月、出会う前の二人の記憶から恋愛の紆余曲折を、それぞれの視点と記憶の断片をコラージュしながら描く。決して分かりやすい作品ではありませんが、あまり難しく考えずこの流れにふわっと乗っかり、静かで幻想的な映像を観ていたら、思春期の頃に抱いた様々な感情が蘇ってきて、懐かしく愛おしく、切ない気持ちでいっぱいになりました。

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派手ではない静かな恋愛物語で、時系列がバラバラなところは、『エターナルサンシャイン』を彷彿させますが、この作品は名もない二人の記憶や意識の流れにスポットをあて、映像として浮かび上がらせた、より観念的な世界が舞台になっているように思う。スクリーンに映し出された映像だって、実は本当かどうか分からない。本人の思い違いかもしれないし、記憶のズレがあったり、あとから都合よく上書きして美化した可能性さえある。当事者しか知らない記憶だから、極めて主観的で曖昧で危ういもの。誰かと話をしていて、「あれっ?」と思うことがあるのは、同じ思い出を共有しているつもりでも、実は違ったりしているということなのだ。どこか頼りなくて不安定な記憶の断片が、ふっとした拍子に、大きな顔をして出てきて、私たちを楽しませたり苦しませたり癒したりするのです。

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作品の映像は幻想的で本当に美しく、これを大スクリーンで観たかったな。ミニロフトのある家・クレーターのような形の温泉・光溢れる緑の松林など、素晴らしいロケーションに監督のセンスが光る。風や空気や湿度を感じさせるチラチラと舞う雪や木の葉っぱ、靄のかかった温泉や風をはらんだ布、風に揺らめく彼女の長い髪やワンピース。ある時は寒色系や暖色系に、そしてまたある時はモノクロにと、二人の記憶や感情に合わせて、画面の色調も刻々と移り変わっていく。さらに時系列はバラバラ、フラッシュバックも多用されて、前半私は何が何だか分からず。「えっ?」な状態に何度も陥りました。

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並行して流れる二つの意識が、交錯したり離れたりしながら、それに重なる記憶の断片。それらはまさに、2声・3声と幾重にも重なるドビュッシーやバッハの音楽そのもので、まるで彼らの音楽を映像化したような作品です。使われたドビュッシーやバッハの曲の中には、むかし梃子摺(てこず)ったものがあり、「あ、あそこ、何回やっても覚えられなかった」「メロディーと中間音の弾き分けが、難しかった」などなど、作品とは全く別のところに気持ちが飛んだりしました。Luca Marinelliは、こういった抽象的・観念的な作品が好きなのかな。デビュー当時に比べると、出演作品の傾向や彼自身の雰囲気が随分変わってきた気がする。目じからはパワーアップしています。


by amore_spacey | 2019-12-30 05:08 | - Italian film | Comments(0)

トラスト 全10話 (Trust 10 episodes)

私のお気に入り度 ★★★★☆ (82点)

ネタばれあり!!!

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【あらすじ】 石油で巨万の富を築き、世界一の富豪となったPaul Getty I(Donald Sutherland)は、同時に世界的に知られたドケチでもある。一方孫のPaul Getty III(Harris Dickinson)は、誰からも愛される優しい性格を持ちながら、ローマでドラッグ漬けの自堕落な日々を送っていた。ドラッグの支払いに困り、祖父から金を引き出そうと狂言誘拐を思い立つが、事態は思わぬ方向に動き、マフィア組織'Ndranghetaが絡む本当の誘拐事件に発展していった。当初犯人は1700万ドル(約50億円)の身代金を要求したが、Getty Iはその支払いを拒否する。
  その一方でGetty Iは元CIAの交渉人Chace(Brendan Fraser)を呼び寄せて孫の奪還作戦を指示し、ローマに暮らす孫の母Gail(Hilary Swank)のもとへ送りこんだ。無駄な金は一銭も払いたくないGetty Iと、何が何でも身代金を手に入れようと画策する'NdranghetaのPrimo(Luca Marinelli)たち、息子の命を何とか救おうと奔走するGail。そんな彼女の一挙手一投足を報道しようとマスコミが付きまとい、事件は世界中を巻き込んで加熱していった。1973年に起きた誘拐事件から着想を得てドラマ化。(作品の詳細はこちら


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Luca Marinelliの一人祭り。ロンドンにあるGetty Iの屋敷とローマの街並み、そしてGetty IIIが誘拐・監禁された南イタリアの町やカラブリアの山村、そこに過去と現在を交差させながら、世界で最も有名な誘拐事件と言われるサスペンスドラマが展開していきます。Getty I卿はもちろんのこと、その背景に潜む人々の裏切や陰謀は、激しく興味をそそります。また何らかの形でGetty家や誘拐事件に拘わった人々にも、それぞれのドラマや人生がある。Getty IIIの父親でドラッグを断ち切れないGetty Jr.(Michael Esper)や彼の元妻Gail、Getty Iの妻や愛人たち、そして屋敷の全てを取り仕切る執事Bullimore(Silas Carson)の人生まで描かれた、とても深い人間ドラマなのです。映画版の『ゲティ家の身代金』よりはるかにドラマチックで楽しめました。それはさておき、Getty家の大邸宅やローマの街並みや南イタリアの山村など、ロケーションが実に素晴らしいのです。

Getty I卿は一代で巨万の富を築き、桁外れの大富豪となった人ですから、やる事成す事も桁外れ。派手な女性関係で、息子たちは全て違う女性との間にできた子どもで、愛人も何人かおり、81歳にして愛人と一戦交えるために、非合法の薬を急所に注射させるというツワモノです。この大富豪の趣味ときたら、戦闘機に乗って敷地の上空から自分の屋敷を攻撃する「ごっこ遊び」。あの歳で整形(リフティング?)も3回なさったようです。が、超ドケチなので、Nixon大統領のお墨付きをもらってすら、身代金要求額の半分しか出さず、残りは孫の父親(自分の息子)に貸し付けて利益を得ようと目論んだり、挙句の果てには身代金を値切るという守銭奴っぷり。

人を愛したり育てたりすることは、からっきし駄目な人間だ。家族愛を知らないまま、大人になったんでしょうか。彼にとって愛情とか幸せって何?「幸せ?ったく、だから凡人は嫌だ」と吐き捨てそうです。ご執心だった美術館の設立は、皮肉な結果になりましたが、自業自得ってもんです。人もどんどん去っていきました。晩年はずいぶん寂しい人生を送ったに違いありません。お金があり過ぎる悲劇と言いましょうか。Donald Sutherlandの怪演は素晴らしかった。究極の鬼畜っぷり!彼以外の役者は考えられません。

ナレーターとしても登場するカウボーイハットの交渉人Chaceは、緊迫した空気を和らげる緩衝材のような存在で、3枚目なキャラクターなんですが、お気楽な人生を送ってきた訳ではなかったようです。離婚した妻と息子の家に向かう彼の後姿は、このテレビドラマを〆るのに相応しいラストシーンでした。


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Getty IIIを演じたHarris Dickinsonは、男性フェロモンが少なくて、ちょっと…ね。彼が影絵遊びをしたり(影絵を教えたのは、祖父なんです)、人質の身であるのも忘れて川遊びをするシーンは、ほのぼのとしました。


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そして舞台が南イタリアに移ると、Lucaがブイブイ言わせてます。映画版では殆ど登場しなかった、誘拐犯人の胡散臭いレストランの経営者(Giuseppe Battiston)やマフィアにもスポットを当て、さらに'Ndranghetaの内情にまで踏み込んでいるのは凄い。マフィア組織にも色んな人間が所属していて、Primoのように凶暴なのもいれば、インテリ青年や日和見派もいる。組織の結束も必ずしも固いとは言い難く、利害関係もさることながら心情的に賛同できないのが原因で、仲間割れがあったり裏切り者が出たりする。巨額の資産をめぐって親族が相続争いをする、Getty家と似たようなもんです。

さて身代金をゲットした'Ndranghetaの一族は、Primoが組長を殺害してボスになり、何と!カラブリアの海岸に巨大な港を作ってしまった。ええ、麻薬を売りさばくためです。カラブリアの貧しい村のチンピラ集団が、港のお陰でイタリア有数のマフィア組織に成り上がったという訳です。


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寡黙でポーカーフェイスで何か企んでいそうな執事のBullimoreは、第1話から気にとめていたキャラで、「1日休みをもらった」と言った時の幸せそうな顔が素敵でした。毒草のリストを、ずっと持っていたんですね。


by amore_spacey | 2019-09-20 00:33 | - TV series | Comments(0)

ルカ・マリネッリ、おめでとう!(Luca Marinelli)

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第76回ヴェネツィア国際映画祭の授賞式が9月7日に行われ、金獅子賞にTodd Philips監督のJoker、女優賞にAriane Ascaride(Gloria Mundi)、男優賞にLuca Marinelli(Martin Eden)が輝きました。


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Lucaが主演したMartin Edenは、20世紀のナポリを舞台に、ブルジョア階級の女性Elenaと出会い恋におちた、一介の船乗りMartin Edenが文学に目覚め、彼女に相応しい人間になるために、文化人としての教養を独学で身につけ、作家として成功するまでの苦闘を描いた作品で、Jack Londonの同名小説をもとに、Pietro Marcello監督が映画化したものです。


by amore_spacey | 2019-09-18 03:56 | My talk | Comments(4)

イケメン帝国!イタリア

先日立ち寄った独逸イケメン帝国! に触発されて、イタリアヴァージョンをやってみました。有望な30代のイタリア人役者7名です。北欧・南西アジア・中南米ヴァージョンも面白そうだなぁ。

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Alessandro Borghi…1986生まれの32歳。イタリア映画で活躍、昨年はヴェネチア国際映画祭でパドリーノを務めた。シャープでクールで気さくなイケメン。私の一押し。


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Luca Marinelli…1984生まれの34歳。『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』のセンセーショナルな役で、人気を不動のものにした。目じからが半端ない。彼も私の一押し。


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Michele Riondino…1979年生まれの39歳。イタリア映画に出演。眉毛と目がチャームポイント。


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Alessio Vassallo…1983年生まれの35歳。イタリア映画やTVドラマで活躍。涼しげな目元がチャームポイント。


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Davide Iacopini…1984生まれの34歳。舞台デビューした後、TVドラマで活躍。童顔が母性本能を刺激する。


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Domenico Diele…1985年生まれの33歳。舞台デビューした後、イタリア映画やTVドラマで活躍。謎めいた視線に悩殺。


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Matteo Martari…1984生まれの34歳。イタリア映画やTVドラマで活躍。一度見たら忘れない顔立ち。


by amore_spacey | 2018-10-15 00:02 | My talk | Comments(2)

イタリアの父 (Il padre d'Italia)

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (70点)

ネタばれ少しあり!

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【あらすじ】 トリノで暮らすPaolo(Luca Marinelli)は、建築家になりたかったが夢叶わず、トリノの家具店で働いている。8年付き合ったMario(Mario Sgueglia)に振られ、傷心を抱えて、ある夜ゲイクラブにふらりと入った。そこで知り合った身重のMia(Isabella Ragonese)が体調を崩し、Paoloの目の前で失神してしまった。ロックバンドのバックシンガーで奔放に生きるMiaは妊娠6ヶ月だが、その子の父親が誰なのかはっきりしない。Paoloは父親捜しに巻き込まれるが、無軌道な旅を通じて自分自身を見つめ直していく。(作品の詳細はこちら


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Luca Marinelliの、たぶん1回だけ1人祭り。『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』『Non essere cattivo』で、切れっ切れのダーク・ヒーローを演じて、強烈な印象を残したLucaが、『来る日も来る日も』では善良で物静かなGuidoを、この作品では母親の愛や家族愛に飢えた孤独を抱えるPaoloを演じている。いやいや、もう演技の振り幅が驚異的に大きく、同一人物とは思えません。しかもダークや善良の演技に微妙な濃淡があり、彼の豹変振りが毎回嬉しいサプライズです。

サプライズと言えば、お人よしのPaoloに付け入って、彼を翻弄させるMiaという女が、見かけも性格もしっちゃかめっちゃかで、自由奔放とかルールに縛られないとか…そんな小綺麗な言葉にはおさまらず、見るからにすれっからしで、真っ当な暮らしをしていないのは明らか。Miaを演じるIsabellaが濃い化粧をすると、松金よね子に見えて仕方がない。というのはさておき、でもPaoloは、そんな彼女となぜか関わろうとする。Miaを見た時から、俺たち孤独を抱えて生きているよな、と感じ取ったのでしょう。


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PaoloはMiaのお腹の子のパパを捜す旅に、半ば騙された形で付き合わされるが、彼にしてみれば今までこんな非日常的な冒険などたぶん経験がなく、内心ワクワクしていたに違いない。このまま会社を辞めて、彼女と一緒に逃亡してもいいかな、なんて実はかなり本気で思っていたかも。

2人の珍道中で、Paoloはおそらく誰にも話したことのない、寂しかった幼少期のことをポツリポツリと語っていく。大人になった今でも、自分を孤児院施設に置いて出て行った母親の背中が、何度もフラッシュバックする。無口で孤独な少年だった。家族愛を知らずして大人になったPaolo。さて2人はトリノからローマ・ナポリまで一気に南下したはいいが、結局お腹の子のパパは見つからなかった。それでも旅は続き、2人はカラブリアにあるMiaの故郷の町へ行くのだ。


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そこでMiaのマンマや身内が、歓迎してくれた。いやぁ、カラブリア方言や訛りが強くて、彼らの会話がかなり聞きづらかった。字幕が欲しい。家族愛を知らないPaoloにとって、温かく迎え入れてくれたこの家は、とても居心地が良く、このままここに居ても構わないくらいだ。が、大人になってもMiaがあんなだから、マンマとの長年の確執が再び表面化し、Miaはまたもや家を飛び出してしまった。結局Paoloはトリノに1人で戻るが、数ヶ月後サプライズの電話が入る。そして彼は大きな決断を下す。今までわだかまっていた気持ちを、これで吹っ切ろう。彼のこれからの人生に、小さな希望の光が灯ったようで、ラストシーンを見ながら、心の底から応援したい気持ちで一杯になりました。


by amore_spacey | 2018-04-26 03:19 | - Italian film | Comments(0)

来る日も来る日も (Tutti i santi giorni)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 ローマ。ホテルのフロントで夜勤担当の博識で物静かなGuido(Luca Marinelli )と、昼間はレンタカー店で働きながら、夜は売れない歌手として地道な活動を続ける勝気で奔放なAntonia(Thony)。対照的な性格だが相性抜群のふたりは、Guidoの夜勤明けに毎日のように愛を交わしていた。ところが子どもを望むようになったことをきっかけに、ふたりの心は次第にすれ違うようになっていく。Simone Lenziの小説La generazioneを映画化。(作品の詳細はこちら


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夜勤が終わって帰宅すると、Guidoは淹れたてのエスプレッソとビスケットを持って、愛するAntoniaが眠る枕元に座り、本日の聖人にまつわるエピソードを語りながら、彼女を優しく起こす。このシーンがふたりの間で、毎朝繰り返される。わぁ、ロマンチック。毎日いいことがありそうな予感がします。タイトルのTutti i santi giorniは、「毎日まーいにち」「うんざりする(バカ正直な)くらい毎日」のように、「毎日」の強調語として使われる。

AntoniaとGuidoは、ささやかな出来事に幸せを見出しながら平凡に暮らす、どこにでもいる若いカップル。でも彼女が子どもを望み、不妊体質の判明から不妊治療が始まると同時に、何かが少しずつ壊れていく。ありがちなストーリーだが、主人公を演じた2人が素晴らしく、人の琴線に触れる作品となっている。特にAntoniaを演じたThonyがナイス。もともとは歌手だが、今回役者に初挑戦したとは思えないような、こなれた演技に目も心も奪われた。

何度目かの不妊治療に失敗したあと、「私ったら何やってるの?子どもばかりに拘らなくたって、まわりをみれば幸せはいろんな形であるじゃないの」と一旦は頭を切り替える。でも心の底に閉じ込めた本音を偽ることができず、再び気持ちは揺れ動く。そんな心の動きが手に取るように、胸が痛くなるくらい分かるんですよ。彼女の語りかけるような歌(歌詞もいい)が、いつまでも耳に残る。彼らが人知れず抱える心の痛みや静かな哀しみ、それを受け止めきれない不甲斐なさ、相手に対する深い慈しみやひたむきな思いなど、言葉にならない感情が2人の間を行き来しながらも、傷ついた心をそっと癒してくれる優しさが、そこにはあった。


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不妊の原因は自分にあって、常にAntoniaは「相手に申し訳ない」「全部私が悪い」という罪の意識に囚われる。だから、「僕たちの子どもなんかいなくたって、幸せに変わりはないよ」と諭すGuidoの言葉も、気休めにしか聞こえない。そんな必要も理由も全くないのに、全てを1人で背負い込もうとして、さらに自分を追い込む。で、Antoniaの場合は自棄(やけ)になって元カレJimmy(Giovanni La Parola)と寝たり、いきなり姿を消してJimmyと同棲したりして、頭の中はぐちゃぐちゃ。このJimmyってヤツが、良い意味のKYで、クスッと笑わせ、緊張を解いてくれました。


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こんなAntoniaにGuidoは激怒するどころか、彼女のナイーブで繊細な感情を傷つけまいと気遣い、決して土足で踏み込まない。彼女の話をきちんと聞き、辛い思いを正面から受け止め、共感しようとする。もうね、Antoniaのことが好きでたまらないんです。だから大学教授になることもできたのに、彼女のために断念した。折り目正しく理性的に生きている彼にとって、自由に生きるAntoniaは異質だけど憧れの存在であり、傷つきやすい彼女にとって、善良で温厚で真面目なGuidoは、心の支えになる人。彼らは互いに無くてはならない、かけがえのない存在だ。終盤に明かされるふたりが出会った夜のエピソード、これがとてもロマンチックで、優しい余韻を残してくれました。


by amore_spacey | 2018-04-21 01:12 | - Italian film | Comments(0)

Non essere cattivo

私のお気に入り度 ★★★☆☆ (76点)

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【あらすじ】 1995年ローマ近郊の海の町オスティア。貧困と暴力がのさばる界隈で育った幼なじみのCesare(Luca Marinelli)とVittorio(Alessandro Borghi)は、20歳を過ぎた今でも兄弟のように仲がいい。毎日中古の車を乗り回し、昼間はドラッグや酒や喧嘩、夜はディスコで憂さ晴らし、日雇いの左官作業やケチな盗みやコカインの密売で、何とか暮らしている。しかしLinda(Roberta Mattei)に出会ってからVittorioは、こんなすさんだ生活から足を洗い、彼女と連れ子の3人で真っ当な暮らしをしたいと思うようになる。同じ頃Viviana(Silvia D'Amico)と親しくなったCesareも、きちんとした家庭を作りたいと考えるのだった。(作品の詳細はこちら


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うわーーっ、この生々しい臨場感は何なのだ!ドラッグ絡みのシーンは何度も観ているのに、本作品にはその場に居合わせたようなリアルな空気があり、嫌でも緊張感が高まる。錠剤を潰して粉にし、それをトランプのカードで1包みずつ分ける。細いストロー状にした紙を鼻に近づけて、テーブルに広げた白い粉を吸い込んだり、粉を指で歯茎に塗ったりする。ドラッグでトリップ状態になった表情が、そりゃもう怖過ぎて、固まっちゃいました。本物の薬物中毒者よりリアルかも。


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そんなCesareやVittorioなんだけど、優しくていいところがそれぞれにある。病気で寝たきりの姪っ子に、クマのぬいぐるみ(店先からかすめてきたものだけどね)をプレゼントするCesareは、まるで彼女の兄貴のようにいいヤツだし、Vittorioは結局Cesareを見捨てることができなかった。だって兄弟のように育ってきたんだから、アイツのことを放っておく訳にはいかないじゃないか。善と悪の間で振り子が大きく揺れるように悶々としながら、悪のスパイラルから抜け出せない2人を見ていると苦々しく思うが、本人たちにその気がなければ、状況改善は不可能だ。荒んだ暮らしを続けるのも、その生活に終止符を打つのも、本人次第だから。


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最悪の結末を予想していただけに、あのフィナーレに救われた。ホッとした。良くも悪くも、私たちの人生は続く。Luca MarinelliとAlessandro Borghi、迫真に迫る2人の演技に拍手喝采。


by amore_spacey | 2016-06-20 03:44 | - Italian film | Comments(0)

皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」 (Lo chiamavano Jeeg Robot)

ネタばれあり!

私のお気に入り度 ★★★★☆ (80点)

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【あらすじ】 ローマ。盗品の売買で小銭を稼ぐEnzo(Claudio Santamaria)は、盗みが見つかり警察に追われている最中に、ひょんなことから超人的パワーを手に入れた。初めはこのパワーを犯罪に悪用していたが、『鋼鉄ジーグ』の大ファンというAlessia(Ilenia Pastorelli)に出会って、彼の中にヒーローの心が芽生えていくのだった。1970年代に日本で公開されていた永井豪のロボット・アニメ『鋼鉄ジーグ』にインスパイアされた作品。2016年David di Donatello賞で新人監督賞・主演男女優賞・助演男女優賞など7部門を受賞。(作品の詳細はこちら


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公開前から、「これは面白い作品だ!」「イタリア初のスーパー・ヒーロー」「コミックを映画化したイタリア初の作品」「イタリア映画にも希望の兆しが見えてきた」と、評判は上々だったので、観に行ってきた。いやぁ、面白かった。皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」という日本語タイトルが、伊語タイトルの何倍も大きくスクリーンにバーンと出てきたのには驚いた。

ハリウッド的なスーパーヒーローを期待して行くと、面食らうかもしれない。何しろEnzoときたら超人的パワーを持ったあとも、ぼってり太った冴えない男のままだし(Claudio Santamariaは役作りのため20kg増量)、ヒーローとして活躍するときも、防空頭巾のような子供騙しの変身道具を身につけるだけだから。殴られたり刺されたりすれば、痣が出来たり血が流れたりする。喜びや悲しみの感情もある。隣の兄ちゃんが、ここぞというときに身体を張って守ってくれるような存在で、血も涙もないサイボーグやロボットとは違うのだ。因みにClaudioは映画の中のアニメの吹き替えも担当し、エンド・ロールで流れる「鋼鉄ジーグのテーマ」も歌ってる。


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ヨーグルトとAV以外には、何の関心もなかったEnzo。その彼を変えたのはAlessiaの一途で無垢な心だった。母を失ったことで心を病み、夢と現実がごちゃまぜの中をふわふわ生きている女の子だが、当初はお荷物的な存在だった彼女のお陰で、Enzoは人間的な感情を取り戻すのだ。Alessiaを悲しませたくない、誰かの役に立ちたい、Enzoは生まれて初めてそんな気持ちに駆られる。Alessia役のIlenia Pastorelliの演技は素晴らしかったが、語尾を飲み込むような超コテコテなローマ弁が殆ど聞き取れず、激しくもやもや~~~。字幕をつけて下さーい!


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さて、登場人物の中で一番濃い滑稽なキャラで笑わせてくれたのは、Lo Zingaro=Fabio Cannizzaroだ。悪党ぶりといいキレっぷりといい、一度見たら忘れられない強烈な容貌や目元といい、どれをとっても可笑しくて仕方がない。Luca Marinelliの怪演が光っていた。イカレまくっている頭の中はお子ちゃまレベルで、ひたすら有名になりたくてしょうがない。いかにして自分の存在を世間にアピールするか?が最重要課題だから、ボクちゃんもEnzoの超人パワーが欲しいよぉーってな訳です。彼も愛情に飢えた寂しい人なんですね。


by amore_spacey | 2016-05-17 00:50 | - Italian film | Comments(2)